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剣と魔法の世界からお持ち帰りしました(13)

<INTRODUCTION>
 異世界に転移したシンヤは、その世界〈アーク〉を救うことに成功した。そのまま異世界で英雄として遊び呆けようと思っていたシンヤは女神に「現実世界、つまり日本に帰らなくてはならない」ことを伝えられる。あまりにも突然の宣告の謝罪として「異世界から好きな人をお持ち帰りして構わない」という条件を付けてもらったことで、シンヤは同じパーティの美少女たちを日本へとお持ち帰りし、優雅で淫らな生活を送るのだった。
 まったりした生活の中で思い出すのは、〈アーク〉での冒険の日々。シンヤは初めて異世界の地面を踏み、村娘ハーナルと出会い、街アスガルドを案内してもらった記憶を掘り起こしていく。ハーナルと少しずつ距離が縮まっていき……?

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 ハーナルとまた二人で街を歩きながら、俺はやるべきことを考える。
 この街アスガルドにいる戦士たちが、一斉に魔物たちを迎え撃つのは、数日後に迫っていた。その前に、出来るだけ多くの人に魔痕を植え付けるのだ。
 そうして、全員の結束を高め、大規模になることが予想されるこの戦闘を把握する。魔痕を刻んだ者たちの感情を読み取ることで、大まかな戦況が理解できるはずだった。
 俺が先頭に立ち、王として従者全員を付き従えるのが理想なのだろうが、俺はそこまでやれる自信がなかったから、まずはフレイの〈レージングル〉と一緒に武器の回収を行いながら、戦況を見守るというのが、今のところの予定だ。
「装備を揃いましたし、準備も大詰めですね! 案内するべき場所は全部案内したと思います」
「ご苦労だったよ、ハーナル」
「それで……今日の晩御飯はどうしますか? そのぉ、美味しいところに連れて言ってくれたりしませんか?」
 相変わらず食事のことばかり考えているハーナル。いくら村でひもじい思いをしていたからと言って、これは単に欲しがりなだけじゃないか、欲張りな女の子だなぁと思いながらも、奢ってあげるのは悪い気分ではない。
「わかってる。好きなところに連れて行ってやるよ」
「やったぁ!」
「だけど、その前にまだやらなきゃいけないことがある。この魔痕を今から出来るだけ多くの人に刻印するんだ」
「さっきわたしにつけたあの紫色のアレですか? 本当に意味あるんですか、あれ」
「お前にはまだわからないかもしれないが、相当強力な能力だ。女神にもらった能力って時点でわかるだろ」
「そうなんですかぁ……ふぅん。さすがシンヤさんですねっ」
 ハーナルはよくわかっていないようだったが、とりあえず強いことは納得したようだった。
 通りを歩いていると、ふいに怒声が聞こえてきた。見ると、道の一角で人々が集まって何やら口論しているようだった。
 騒がしいな、と思いながら通り過ぎようとしていると、野次馬の群れの中に、やたらでっぷりと太った男が椅子に座って上から指さしながら話しているのが見えた。
 男は座っているだけで、その周りでメイドたちがせかせかと働いていた。金銭の授受などの雑用をやらされているようだ。
 白黒のモノトーンのメイド服を着て、頭には可愛らしいカチューシャまで着けている。美人揃いで、相当金持ちなんだろうと予想がついた。
「わたしは武器をこの街に提供しているんだ。これくらいの値段は当然だろう」
「ふざけやがって! こんな値段、手が出るわけがねえだろ!」「武具が足りてないところにつけこみやがって!」
「それが物流というものだ。物が足りないところでは価格が上がり、余っているところでは価格が下がる。
当然の現象だ」
「限度ってものがあるだろうが!」
 そのでっぷりとした男は、武器類を売っているようだった。
 大して上物ではない、普通の剣や盾だったが、その値段がやたらと高い。昨日、店を回っていたから相場はわかった。相当高級で、切れ味がよかったり、長持ちしたりするような剣と同じような値段で、俺が今持っているような中古の剣と同じような代物を売っている。
 どうやら、その商人は今日、アスガルドに来て武具を売り始めたようだった。商売の良い機会とみなして、一儲けするつもりなのだろう。
「ひどいですね……でも、しょうがないんでしょうか」
 ハーナルは横目に見て、ちょっと悲しそうな声で言った。
 俺は、ここは一つ街の人々を助けてやりたいと思った。そう、まだまだ、この街には武具がなくて戦闘に出ることのできない人々がいる。
 ここで武器がその人々に行き渡れば、今回の魔物退治に向かう人も増え、このアスガルドの滅亡の運命も回避できるのではないか。少なくともその一歩にはなるかもしれない。
 やるしかない。俺は大声を出した。
「おい、そこの商人! お前のやり方は間違っているぞ!」
 野次馬と化していた人々が俺を振り向き、飛び交っていた怒声が止む。
「何やってるんですか、シンヤさん!?」
「いいからお前は黙ってみていろ」
 ハーナルを宥めて、俺は商人に近づいていく。
 その場にいる人々の意識が俺に向いているのが分かって、ちょっと怯みそうになったが、今の俺には例の力がある。俺は自信をもって、声を張り上げる。
「道を空けろ! そいつの顔を見て話したい!」
 人々の群れが、さっと左右に割れた。ざわざわ……と期待と不安が混じるようなひそひそ声が聞こえ始める。俺は堂々とでっぷりとしたその男に近づいていった。
「なんだ貴様は。魔法使い風情に商売のイロハがわかるものか」
「いいや、わかってないのはお前だ。お前は商売以前にこの街の人々に貢献し、街を救うべきだ」
「何を言っている?」
 俺がぐいぐい商人に向かって進むと、メイドたちが俺が暴力でも振るうと思ったのか、これ以上近づかせまいと通せんぼをしてきた。
 そのうち、女どもの力では足りないと判断したのか、後ろから雇われているらしき大男が俺の前に立ちはだかった。
「ご主人に近づくな」
「悪いな」
 俺は、その大男の肩に触れて、そこに魔痕を植え付ける。
 俺は初めて、強引な力の使い方を試してみる。無理やりその男に、言うことを聞かせるのだ。
 ――俺を主人の目の前へ連れていけ!
 そう強く念じると、大男はうっ、と息が詰まったような声を出した。一瞬俺の命令に従うことを拒もうと、わなわなと震えていたが、抗うことは出来なかった。
「かしこまりました」
 まるで俺が主人かのように恭しい言葉。
 大男は、俺の背に手を当て、商人のもとへと連れていく。どう考えてもおかしな光景に、野次馬たちは困惑している。
「おい、何を考えている! わたしを守れ!」
 商人の言葉には耳も貸さず、命令通り、迷わずに俺に付き添った。
 俺は、椅子の上で瞠目して縮み上がる商人の手に、自分の手を重ねながら言った。
「お前は自分の利益しか考えていない。この街そのものが滅んだとき、お前の大事な客もいなくなることになる。街に貢献することで金を稼ぐのがあるべき姿だ」
 言葉と同時に、商人の手の甲に魔痕が刻み込まれていく。
 それを驚きとともに見ていた商人だったが、やがて、俺の考え方に共感し始めるのがわかった。
 共感の力――強制するのではなく、考え方が寄っていく。俺の言葉はもともと一理あるものだ。自分の商売は間違っていたのではないか? 目の前の魔法使いの言葉が正しいのではないか? と商人が迷うのを感じ取れた。
 結局、商人は脂汗をかき、自分はいったいどうしてしまったのだろうと内心混乱しながらも、こう口にした。
「わ、わかった……確かに、この街で得られる利益は大きい。お前たちには次の魔物退治を無事に成功させる必要がある。今回は特別に、この半額で取引しよう。その代わり、確実にこの街を守るのだぞ」
 おおぉっ! と歓声が上がった。野次馬たちの喜びのどよめき。まさか、説得することが可能だなんて、信じられない。そう思っているに違いなかった。
 俺は自分の能力の強力さに改めて舌を巻いていた。強引に言うことを聞かせることも出来る。思考を同調させることも出来る。
 俺は歓声の中心で、街の人々に手を振りながらそそくさとその場を後にした。これくらいで英雄視されていてはたまったものではない。俺はこれからこの街を、そしてこの世界を救おうというのだから。
 
〈アーク――8〉

 ハーナルは、俺の活躍を見て感心しているみたいだった。俺にくっついてきて、なんだか媚びるような目線を向けてくる。
「さっきのシンヤさん、すっごい格好良かったです♡ ヒーローって感じでした」
「まあな。格好良かっただろ」
「そういうこと、自分で言われるとげんなりですけど……」
「でも、ちょっと予想外のことがあって本当は満足してないんだけどな」
 あの後、俺の能力の強力さと言うか、代償のようなものを目の当たりにした。
 無理やり言うことを聞かせた、あの大男が突然泡を吹いて倒れたのだ。命に別状はないようだったが、俺が見た限り、そのまま起き上がることはなかった。強引に命令することによる心身への負担が現れたのだろう。単に気絶しただけのようだったが、俺は自分の手のひらを見つめて身震いした。
 強引に言うことを聞かせる相手は選んだほうが良い。女神もそう言っていた。目の前で実証して見せられると胸に来るものがあった。
 ハーナルは呑気な顔で言った。
「あの大きな男の人のことですか? あの人って、シンヤさんが力を使ったから倒れちゃったんですよね?」
「まあな。ハーナルにも、同じような力を使えるぞ。背中に魔痕が刻んであるの忘れたのか?」
「えぇっ!? そんなこと出来るんですか! わたし、あんな風になりたくないですよぉ」
「わかってるよ。ハーナルにそんなことするわけないだろ」
「それなんですけどぉ……さっきから、背中がうずうずして仕方ないんですけど、なんなんですか、これ」
 くるり、と背中を向けられて、俺は驚いた。
 ハーナルの背に刻んだ紋章が、輝きを増しているのだ。何が起こっているのか、ちっともわからない。
 女神は何かこれについて言っていただろうか……記憶をたどって思い当たることがあった。女性に魔痕を刻まないほうが良い。
 まずいな、と思った。さっきの男のように泡を吹いて倒れられたら困ってしまう。何か深刻なことにならなければいいけど、と願いながら聞いた。
「大丈夫か、ハーナル? 体の調子が悪かったりしないか?」
「何だか……体が熱くて。変な汗もいっぱい出てくるし。そうだ、シンヤさん、水浴びに行きませんか」
「水浴び?」
「冷たいお水で身体を清めたいんです。じっとり汗かいちゃって、気持ち悪いんですよぉ」
 どうやら、この世界の人々はお風呂に入るような感覚で、水浴びをするらしい。
 気がつくと、なんだか、ハーナルの目つきがとろんとしている。だらーん、と俺に寄りかかって、いかにも本調子ではなさそうだ。
 はぁ♡ と吐息もなんだか艶めかしくて、ドキリとさせられた。俺は出来るだけハーナルを女と意識しないようにしながら、その体を支えた。
「大丈夫か? その水浴びはどこで出来るんだ」
「この街の近くに綺麗な泉があって、わたしはよくそこで水浴びしてます……連れて行ってくれますか?」
「任せとけ」
 俺はふらふらしているハーナルを半ば抱きかかえながら、その泉に向かった。
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